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生産緑地の2022年問題

2019年1月27日

名古屋市内でも駅から車で10分も走れば、広い畑が目に入ってきます。

しかし、住宅地の中に残されたこうした広い畑が、2022年以降に消えてしまい、宅地として不動産市場に大量供給される問題があると指摘されています。

1992年に改正された法律が定めた30年という期限が到来して、その多くが宅地化されるとみられているのです。

 

「相続問題や不動産市場で注目される生産緑地とは?」

 

1992年に改正された法律とは「生産緑地法」です。

良好な都市環境を確保するため、都市部に残存する農地の計画的な保全を図る目的で制定された法律です。

1992年に同法が改正された際、市街化区域内の農地は、「宅地化すべき農地(=宅地化農地)」と「保全すべき農地(=生産緑地)」に分けられました。

市街化区域といえども農作物の栽培で優れた農地として活用されているエリアもあります。

新鮮な農作物の供給源として都市近郊に保全すべきこうした農地のため「生産緑地」制度が導入されました。

「一度指定されたら解除が難しい生産緑地」

 

いったん生産緑地に指定されると、指定を解除できる機会は滅多にきません。

農業経営だけの収入では不安だからと、生産緑地を解除してアパートや駐車場経営で収入を得ようと考えても、思い立ったときに解除ができるわけではありません。

 

生産緑地の指定を解除するには、

1・生産緑地の指定後30年が経過した場合
2・農業従事者又はそれに準ずる者が死亡した場合
3・農業従事者に農業ができない故障が生じた場合

のいずれかのときに、自治体に生産緑地を買い取るように申し出る必要があります(通称「買取申請」と呼ばれます)。

今までは2か3の場合にしか買取申請をすることができませんでした。

但し、実際には買取申請は儀式的なもので、自治体が買い取ることも、他の農家にあっせんされることもほぼありません。

そのため買取申請から3ヶ月後には生産緑地の指定が解除されます。

 

解除されると「売れない」「貸せない」「借りられない」「建てられない」といった制限がなくなりますが、翌年から固定資産税等の優遇措置もなくなります。

ただ所有しているのでは、土地が広いだけに所有者の税負担は大きいです。

売却するか、賃貸住宅等を建てて「有効活用」するほかはありません。

土地の上にアパートなどの賃貸住宅を建てれば、固定資産税や相続税を下げることができるからです。

 

「生産緑地の2022年問題」

 

相続が発生したり、大きな障害を負うなどした場合以外では申請できなかった生産緑地の指定解除が、30年経過しただけで可能となるのが「不動産の2022年問題」の発生原因です。

1992年に改正されてから30年を経過するタイミングが3年後に迫っています。

2022年以降、都市部の生産緑地が指定を解除され、毎年のように不動産市場に多く放出され需給バランスを崩すと見られるのが「不動産の2022年問題」です。

もちろん、30年経過したからといってすべての所有者が生産緑地の解除を行うものとは考えにくいです。

しかし農業従事者の高齢化や後継者不足も避けられないなかで、たとえ30年経過しなくても、相続(所有者死亡)や農業後継者がおらず農業経営が続けられない場合には生産緑地を解除するしかないことを考慮すれば、大規模な生産緑地の不動産市場への流入は避けられないと言われています。

 

立地が良ければオフィスビルやマンションの経営に乗り出すこともできるでしょうが、そもそも恵まれた立地というのは多くはありません。

そのため、多くが小規模なアパート経営に乗り出すか、戸建て分譲業者に売却すると考えられます。

とりわけアパート経営に関しては、近年、相続税対策で増えたアパートとの競争激化が避けられません。

こうした状況下でアパートの供給が増えれば、さらなる空室問題が予想されます。

これから相続させる・相続する当事者にとってはよく検討しなければならない課題です。

2053年には1億人を割り込むと言われる人口減社会は、これから本格的な到来を迎えます。

高度経済成長時代のような、農地の宅地化により住宅を増やしていくという都市計画行政からの、大幅な転換が求められています。

 

「土地を売りたい人、買いたい人は?」

 

2022年に圧倒的な土地放出があると、供給過多になり不動産価格が急激に下落する可能性があります。

そのため、売却したい土地所有者にとってはデメリットになりますが、2022年以降に土地の購入を考えている人にとっては土地を安く手に入れられるチャンスととらえることができます。

ただし、2022年以降も住宅ローンの金利が低金利のまま推移するとは限らないため、金利水準の動向にも注意しておく必要があります。

不動産の購入を予定している人は、タイミングを慎重に検討したいところです。

 

しかし、2022年以降に購入することで安く土地を取得できる可能性があるとはいえ、誰もが購入を先延ばしにできるわけではありません。

近いうちに不動産を購入したいと考えている人は、生産緑地のことを頭に入れておくことが重要です。

将来的に価値が落ちない、あるいは落ちづらい立地をよく吟味しましょう。

特に都市部で不動産の購入を検討しているならば、まずは周辺に生産緑地がどの程度あるのか、自治体に確認して把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

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